白菜が、てろんと溶けて、甘く消えた

食べ歩き ,

白菜が、てろんと溶けて、甘く消えた。
繊維など一切ないムースの舌触りで、素直な甘みの余韻だけが舌に響いている。
奥底に毅然とした品位を秘めながら、慈愛に満ちた甘みに、体が弛緩する。
どうしたら白菜がこうなるのだろう。
地味に見える料理が持つ凄みに、深遠なる味わいに、鳥肌が立つ。
白菜の芯だけを3日間干し、冷蔵庫で1日じっくりと水分を戻して、20分間揚げる。
そして中国筍と椎茸を合わし、スープと焦し醤油で味を調える。
甘みは白菜から出る甘みのみである。
その甘みは我々の想像をはるかに超えて、幸せを運ぶ。
深々と大地に感謝したくなる、汚れなき甘みにただただ笑う。。
日本で唯一の正宗北京料理の継承者、「北京遊膳」斎藤永徳氏だけが引き出すことができる、白菜の力である。