「地元の漁師から、獲れたと連絡があったので、使わせていただきました」。
宴のスタートは、仔牛肉のような「海亀の串カツとできたてのカッテージチーズ」から始まった。
異国の地で料理を作るのは、至難の連続だと思う。
一昨日夜、キューバの渡邊日本大使のお招きで、大使公邸にての晩餐に参加させていただいた。
まだ30代の千野料理長は、まずいかにいい食材を仕入れるかと言うことに苦心したという。
植物などないものは栽培できるし、玉子は鶏舎を作った。
なによりも問題は魚介である。
キューバの食文化は、スペイン内陸部から侵略者によって形作られたため、海に囲まれていながら、魚を食べることが少ない。
タンパク源は、基本豚であり、鶏であり、豆である。
地元の漁師と密に話し合い、説得して、魚を分けてもらえるようになっていった。そんな結実が「キューバ野菜と魚介のサラダ」である。
鮪、オコゼ、シイラ、コンク貝、蟹と野菜を盛り合わせたサラダである。
当然ながら、農薬など使わない(使えない)有機野菜は力強く、それの呼応するように、魚の甘みが溶けていく。
ここまで来るには相当な道のりだったろうと思う。
次は、蒸しロブスターとロブスターの蟹コロッケ。
加熱法によっては大味になりやすいロブスターの繊細を引き出して、舌に優しい。
思わず笑みがこぼれる味わいである。
肉料理は、「豚ロースの糀漬け、炭火焼」。キューバ人はこれでもかと焼きすぎる感があるが、しっとりと肉汁を保ったまま焼き上がり、糀のほんのりとした甘さが豚脂の甘い香りと響きあう。
漬け込みの浅さの計算が素晴らしい。
バナナの炭火焼も、ねっとりと均一に焼かれて、微かな酸味が甘味の出会いがたまらない。
そしてデザートは、しっかり焼かれたプリンに、干し柿の味がするマメイーという果物のソルベ。スターアップルなど果物盛り合わせ。
地の食材を愛し、旬の味を生かす。
そんな日本料理の精神が貫かれた、素晴らしい宴席であった。
最後は、渡邊大使、山倉参事官、島田一等書記官、駒瀬三等書記官とともに、おきまりの「やぁ!」
異国の地で料理を作るのは、至難の連続だと思う
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