飯田「柚木元」

生きているアスパラガス。

食べ歩き ,

アスパラガスが皿と接している部分を見て欲しい。

エキスが垂れて、輝いているだろう。

「マッキーさんがいらっしゃるのと入れ違いで、農家の方が帰られました」。

と、萩原さんが言う。

つまり収穫されて1時間以内のアスパラである。

「このまま生で食べたい」。

わがままを言うと、根っこを少しだけ切ってくれた。

「パシュ!」

噛めば、勢いよくアスパラが断ち切れる。

食感は梨のようで、淡い甘みが弾け飛ぶ。

この極めて鮮度が高く、図太いアスパラを活かすべく、萩原さんは少量の水で蒸し焼きにした。

白アスパラからいく。

最もミネラルを感じる根元からかじりつく。

グッと力を入れて噛んだ瞬間、アスパラのエキスが清流となって流れ込んだ。

初々しい甘さを伴って、舌を過ぎ、喉へと落ちていく。

「ごくん」。

エキスの多さに、思わず喉が鳴った。

穂先の方に進んでも、「ごくん」と、喉が鳴る。

その後緑を食べても、豊富なアスパラの体液が喉を揺らす。

地中の水分を吸いながら、天に向かって伸びゆくアスパラの命が、口腔を満たし、やがて体中の細胞へと染み込んでいった。

飯田「柚木元」にて