生きているよ

食べ歩き ,

「生きているよ」。
噛み締める度に、アスパラが囁く。
熊笹と塩で包まれ、230℃で蒸し焼きにされたアスパラは、命の気配をたっぷりと残していた。
シャクシャク。
穂先を噛めば、ほの甘い香りが漂って、切ない気分となる。
コリッコリッ。
根元を噛めば、大地のほろ苦い養分が溢れて、ありがとうと呟く。
火が通されているのに、生命の躍動を宿している。
穂先から根元までの、それぞれの味や食感の違いが、明確にわかる。
それこそが、生きているという証だろう。
「フランスやドイツのアスパラでも試したのですが、あちらはバターで炒めたりといった強い調理が向いている。しかし北海道、安平町八木さんが作るアスパラは、これが一番です」。高橋シェフはそう言って、我が子を見るような優しい目になった。
シャクシャク。コリッコリッ。
命が弾け飛ぶ。
生かされている喜びがせり上がる。
「ラ・サンテ」のスペシャリテ、「北海道産白アスパラガスの塩竈焼き」。