その居酒屋の品書には、まず「燗」というのが先にあった。

これがいい。

大抵は、日本酒の銘柄がずらりと書かれていて，最後に燗酒が三種類ほど載せられていることが多い。

日本酒に力入れてますなんて姿勢を表しながら，力を入れてないじゃないかと思わせる。

しかしここは珍しく、まず燗酒があり，次のページに、冷酒があった。

しかもこのラインナップである。

燗酒にしてうまい酒が、ずらりと並んでいるではないか。

さらには，右から左に行くに従って、次第に濃い酒になっていく。

ルビがふってあるのもいい。

日本酒の詳しくない人だと，なんて読むのかわからずに頼みにくいうえに、「じゅうあさひ下さい」と頼んで，「じゅうじあさひですね」なんて返されて，恥をかく。

ここの店主，日本酒を愛しているんだなあ。

嬉しくなって、日本酒は三合までと決めていたのに，四合も飲んでしまった。

月の井に始まり、奥播磨に行って、十旭日、天隠とお願いした。

美人女将がつける燗づけの温度も、ぴたりと決まって，体の中に幸せがぐんぐん膨らんでいく。

こりゃあ日本酒好きと来なくてはね。