焼き海苔が来て思った。
「はたして焼き海苔はどう食べるのが正しいのか」。
温められている一番下の海苔を引き出して、最後に一番上に乗っていた海苔で締める。というお作法だけは心得ている。
だが海苔の表裏どちらを舌側にするのか、醤油やわさびをどれだけつけるのか問題がある。
まず海苔は一枚そのままの形で食べるのか、半分に折るのかという選択がある。
わさびは、乗っけるのか包むのか問題もある。
醤油は、海苔の先につける、海苔半面につける他の問題もある。
食べてみるとわかるが、わさびの香りは強く、海苔の香りが負けてしまうことがある。
で、結論から言おう。
海苔の表面にわさびを乗せ、箸の先で醤油をつけてその表面に数滴垂らす。
しかる後半分に折って裏面を表にして食べるのである。
だが、もっといい食べ方を知っている人がいたら教えてほしい
次に板わさである。
よく板わさと焼き海苔を同時に頼む人はいるが、あれはいけません。
板わさが先に来て、海苔が後になり、そのタイミングが重なるとどっちを先に食べるのか、気になってどうにも落ち着かない。
先に焼き海苔を頼む。焼き海苔をじっくり楽しんでから板わさを頼む。
「蒲鉾に醤油を浸けるなんて、言語道断」。そう鈴廣の方に言われたが、そば屋の板わさだけは大目に見てね。
ちきしょう。来たぞと思う位わさびをたっぷりつけて、醤油をちょん。さけをぐびり。幸せだなあ。
〆はおかめといってみましょうか。
茶のつゆに、下膨れの白い頬が輝いている。松茸麩の団子鼻が微笑ましい。蝶形にまとめた湯葉が、娘の髪型を表して可愛いな。
僕はここにわさびを少しずつ落としながら、食べるのが好きなのだな。
並木藪蕎麦にて。
お作法シリーズ