焼きおにぎりの不思議

食べ歩き ,

焼きおにぎりは誰がいつ考えたのだろう。
一説によれば17世紀に「焼飯」としてその作り方が記されているという。
おにぎりを「焼く」というのは、コペルニクス的転回だったのに違いない。
焚き火を囲んでおにぎりを食べていた男が、うっかり焚き火の中に落とし、すくい上げたら美味しかった。
きりたんぽのように、半殺しした米を串に刺し、焼いてみたらうまかった。
魚沼の「けんさん焼き」はそれである。
今では当たり前だが、すでに炊きあがってそれだけで十分うまいご飯を、さらに焼くという考えは、思いつかなかったに違いない。
それにしてもこいつはうまい。
一つは外と中の食感の違いである。
カリッ、あるいはガリッと噛むと、中からふんわり優しいご飯が現れる。
その対比が、ことの外嬉しい。
一つは、焦げた醤油の香りである。
我々日本人は、焦げた醤油=おいしいものと記憶されており、嗅いだだけでパブロフの犬となる。
一つは、旨味の相乗である。
ご飯の甘みに、醤油の旨味が抱き合い、そこへ微かな焦げた苦味がアクセントする。
焦げはなくてはならないが、全体の5%から7%にとどめたい。
この焼きおにぎりのように。
食べる時は、三角の頂点をそれぞれ食べてから、中心をゆっくり食べていく。
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大阪焼き鳥「吾一」の焼きおにぎり。焼き鳥は別コラムを参照してください