魚の説明に、愛がにじんでいる。
言葉の一つ一つに、誠実があり、魚に対する謙虚な敬意が満ちている。
この店に来て、最も感じることは、そんなご主人の心根である。
だから、微塵もいやらしくない。
さらに言えば出身の千葉を愛し、海老以外はすべて、地元の漁師を通じて仕入れている(海老も千葉産)。
魚だけではない。
醤油も酒も野菜も、千葉のものを使う。
地元のものだけを扱う寿司屋さんは、少なくなった。
ベストのものを求めようとすれば、そういうわけにはいかないからだろう。
しかし一度この店に来れば、千葉の人たちは全国に向かって胸を張れる。
おそらくここまで到達されるには、たゆまない努力と精進があったのだろう。
カツオが出された。
銚子の置き網で、朝どれだという。
極めて鮮度が高いゆえ、あえて血合いを少しだけ残してサク取られ、刺身にされた。
口の中を、爽やかな血しぶきが駆け回る。
噛めばそれは、コクとなって深い余韻を残すのだった。
アジは金谷のものだという。
脂が乗っているがどこまでもきれいで、舌をさらりと流れていく。
噛めば、もっちりとして、一瞬歯を押し返すような感触があり、喉に落ちるときには、ごくんという音が聞こえるような存在感がある。
富津のスミイカは、お湯で表面を残し、小さいのにパキッとした歯ごたえをだし、切ない甘みとの対比に興奮させる。
そして鴨川のシマアジは、締まった身を噛み込むと、品のいい脂が、つうっと舌に流れていく。
そして余韻がなんとも色っぽい。
ああまた惚れる寿司屋に出会ってしまった。
「千葉たかおか」にて