溌剌と柔和と情愛と。
3種の酸味が、リー・ド・ヴォーに語りかける。
ヴァンジョーヌと共に加熱されたヴァンブランソースの、丸い酸味は情愛を漂わせ、フランボワーズの溌剌とした酸味は舌を刺して、覚醒させ、煮詰めた赤玉葱の熟れた酸味か、柔和に寄り添う。
リー・ド・ヴォーのねっとりとした甘みは、3種の酸味とまぐわいながら、表情を変える。
「私の魅力は、一つだけではないのよ」と言いたげに。
こうして僕らは、「酸味フェチです」と自ら語る高良シェフの、新たな酸味使いに落ちていく。
かつてこんなにも、リー・ド・ヴォーのピュアに焦点をあてた料理があっただろうか。
古典料理の魅力を踏まえつつ、新たに生み出されたエロス。
それはモダンという言葉ではない。
むしろ食材の根源的な魅力を見つめ直して生まれた、未来である。
「レカン」にて。
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