沖縄北谷「ARDOR」の続き。

食べ歩き , 日記 , やぁ! ,

沖縄北谷「ARDOR」の続き。
どうです。「ARDOR」で働く人たちとの「ヤァ!」です。
後列向かって右から二人目が、店のオーナーでもあり、支配人でもあり、ピッツァイヨーロでもある中村さん、その隣で若干恥じらいながらヤァ!しているのが、幼馴染だという比嘉シェフである。
スタッフ一同、見事なヤァ!である。
笑顔が素敵な人が多い店は、料理がおいしい。これが長年ヤァ!を続けてきた結論でもある。
食べ終わって比嘉シェフと話していると、僕の友人の孫弟子だということを知った。
高校、大学の友人で、彼はスペイン料理の店を開いたのである。
その彼の弟子の元で修行したという。
その友人とは、何度も料理のことを話し合った。
夜な夜な店の近くのBARで、葉巻好きだった彼と煙を燻らせながら、料理の話や彼の夢のことを語り合ったなあ。
だが彼は、若くして逝ってしまった。
沖縄北谷で、彼の哲学を受け継いだシェフが料理を出している。
思いは繋がる。それが料理である。
胸が熱く、目頭が滲んだ。
ダダ!! 素晴らしい縁をいただいてありがとう。

料理中盤、「ほうき鶏 胸肉のロースト 赤ワインソース」を食べて驚いた。
焼いたのは僕の隣で、ヤァ! をしている女性料理人である。
分厚い胸肉なのに、均一にしっとりと火が入っている。
水分が抜けて、パサつきそうになる部分が微塵もない。
噛めば、歯がやさしく包まれる。
いや噛んでいるというより、肉に迎え入れられているような感覚で、穏やかな滋味が湧き出てくる。
胸肉に赤ワインソースは強いかと思ったが、的確な加熱がほうき鶏自体のたくましさを存分に引き出して、見事に共鳴し合う。
付け合わせの、甘さは強くないが香りが高い島かぼちゃもいい。
続いては、「トガリエビスのヴァポーレ、ドノスティアソース」である。
地魚トガリエビス(イッコダイ)は脂が乗って、肉が締まったキンメという風情がある。
ソースは、魚のコラーゲンと脂を乳化させた、バスクのココチャ料理で持ち入れられるソースである。
そのまろやかが、魚の甘みを包み、トガリエビスが生の喜びを口の中で弾けさせる。
いいなあ。
そして肉は、石垣赤牛サーロインと北海道産黒毛和牛サーロイン食べ比べである。
綺麗に焼かれた、二つの肉を口に運べば、どちらも優しい

だが赤牛は、穏やかな、どちらかといえばのんびりとした味わいであり、黒毛は、少し色気を帯びた優しさである。
最後は、あさりご飯。
あさりのアロスヴェルデ、アロス・コン・アルメハスと言われるものだが、現地ではパセリを使うところを、フーチーバーを使っているという。
その苦味がいい。
ウチナンチューでもにがてな人が多いというそのえぐみが、見事なアクセントをつけて、あさりの旨味を持ち上げている。
デザートは、「シナモンとぶどう」である。
甘酸っぱいローゼルのジャムとさんぴん茶の泡が、なんとも洒落ている。
そしてワインの合わせもいい。
ガルビュールスープにクースー、タルタルにうまみがある、PARATIDA CREUSのガルナッチャ、魚料理にペドロヒメネス。心憎い。
また行くぞ。

 

2020年閉店