椎茸の純

椎茸である。

堂々たる厚みを持った原木椎茸は、揚げられ、余分な水分だけが抜かれ、半分以下の薄さになっていた。

シコッ。

噛めばあのクニュっとした歯ごたえはない。

アワビに似た食感で、大きな身を誇る。

瞬間、豊かな香りが口に充満し、鼻に抜けていく。

傘を広げ、空中の養分を吸い込み、体を大きくしていった椎茸の精が、香りを爆発させる。

椎茸の旨味も濃縮しているが、澄んでいる。

目を閉じ、口の中で咀嚼しながら、なくなっていく椎茸の味と香りを愛する。

片面だけ衣をつけ、切り込みを入れた傘の上面は、油の上に出すようにして揚げる。

椎茸は熱せられ、余分な水分は切れ目から蒸気となって、逃げていく。

こうして、椎茸の純だけが残る。

それこそが、椎茸の真の姿だった。

「たきや」にて