松茸スープパスタである。

普通に考えれば、かなり際どい。

どうだ俺はこんな贅沢しちゃったんだぜいと、嫌味に自慢しちゃう料理である。

しかしこの料理には、練りに練られた理があった。

ツルル。

パスタをすする。

シャキシャキ。

笠がまだ開いていない松茸は、瑞々しい歯触りを放つ。

その中を優しい味わいのスープが流れ、卵の甘みを伴ったタヤリンが、シコっと弾む。

ああ、これだけで痛快である。

だが痛快には、訳があった。

水分を吸い込みやすいタヤリンゆえに、炒めるのではなくスープにさっと入れて、その食感と風味を楽しんでもらう。

スープは、ブレス鶏のフォンである。

しかしそれでは、笠の開いている松茸の強さなら拮抗できるが、閉じている松茸の初々しさでは負けてしまう。

だからといって水で薄めては味気ない。

そのため、三回とったという昆布カツオの出汁をわからない程度に入れて合わせた。

だからこそ、パスタ、松茸、スープが、丸く、丸く馴染んでいる。

高級食材を使いながら、これ見よがしではない、さりげないさがある。

つまり“品”があるのである。