東京とんかつ会議179回虎ノ門横丁「つかんと」番外編 「ロースカツ定食」1200円
今回は評価なしの番外編となる。なぜなら東京とんかつ会議では、ご飯、味噌汁、お新香という「定食」を評価し、とんかつに必ず付け合わせるキャベツも評価する。しかし「つかんと」ではキャベツも(代わりに突き出しでコールスローがでる)、お新香もつかないので点数がつかず、番外編とした。
ここ「つかんと」は、白金台にあった「TIRPSE(ティルプス)」というフランス料理店のオーナー、大橋さんが出した店である。「TIRPSE」では過去二回、昼営業の一週間だけ「つかんと」と名を変え、とんかつの新しい解釈としてのコース料理を出されたことがあった。
フレンチの技法を用いてとんかつを再構築しようという試みで、松坂ポークを8割加熱し、藁で炙ってから、衣を漬けて高温でサクッと揚げたり、天然酵母のパン、ロデブを焼き、ブーダンノワールを塗ってカツサンドにするなど、とんかつという料理の可能性を感じさせる料理だった。
一方ここの「つかんと」では、「ロースカツ定食」1200円「ヒレカツ定食」1200円「カツ丼」1400円しかない(いずれも昼のみ)。しかしフランス料理店時代のエッセンスを受け継いで、実にユニークな方法でトンカツを揚げている。一旦豚肉をコンフィにしてから衣をつけ、ラードと米油の混ぜた油で揚げているのである。最初に優しく火が入っているので、パン粉をきちんと揚げればいい。
この発想の転換で、断面がロゼになった見事なとんかつが登場する。衣はきめ細かくカリカリとして揚げきりもよく、肉もこの値段としては質が高い。一見火が入ってないかのようなレアの見た目だが、十分加熱されて芯まで熱々である。豚肉の甘い香りを放ちながら、脂がするりと溶けていく。
オリーブオイルと塩もいいが、このカツにはソースちょいがけが合うと思う。そして嬉しいのは、新潟県の有機コシヒカリを使ったご飯が美味しいことである