駅弁勝負
肉と魚のがっぷり四つだった。
私は、「懐かしの味 昭和百年弁当」丸政1280円、相手は、「こぼれいくらととろサーモンハラス弁当」吉田屋1680円である。
方や小淵沢の名駅弁夜、方や八戸の名駅弁屋という、業師の対決とあいなった。
昭和百年弁当」は、丸政の名駅弁である「万作弁当」「牧場の牛めし」「元気甲斐」「高原野菜とかつの弁当」を合体させた欲張り弁当であった。
映え感では負けるが、ゼータク度合いでは、どちらにも軍配が上がる。
立ち上がりから、体と体がぶつかりガチンコ勝負となった。
私はすでに四つの弁当を食べているので、味はわかっているつもりでいたが、改めて食べると、万作弁当示唆の山菜のの下にあるご飯が、美味しい。
味つけが絶妙で、余韻で、また食べたくなる。風邪。
ご飯を呼ぶ牛肉の味付けもいい。
ただし一つ疑問があって、牛の脇に練りわさびが添えられていることだった。
このわさびは、何につけたらいいのか?
さっぱりわからない。
思わず「よかったら使いますか?」とサーモン弁当の人に言いたくなった。
彼は、蓋を開けると、いきなり鮭にかじりついた。
脂が乗っていそうなぶ厚い鮭である。
上手を取られた。
イクラを散らしながらご飯をかき込んでいる。
それをみた瞬間、そのまま体を寄せられ、土俵際にて、うっちゃりで投げ捨てられた。
実はもう一つ敗因がある。
まず席がいい。進行方向に向かって右側の窓席である。
さらに彼は、電車が走り出してからすぐには食べようとしない。
ハイボールを一缶じっくり飲んでから、紐解いた。
発車後約40分後である。
そして45分後、右手に富士山が見えてきた。
空はそれをじっくりた眺めながら、また一口酒を頬張るのだった。