京都イノダコーヒ四条店

早く、わたしにナイフを入れて   

食べ歩き ,

クリームコロッケにナイフを入れるとき、ドキドキする。
「さあ早く、わたしにナイフを入れて」と、皿の上で誘いかけるコロッケに、どぎまぎする。
他のフライでも胸が高まるけど、クリームコロッケはちょいと違う。
中のソースの色は何色だろう?
切った瞬間にホワイトソースが、とろりと流れ出るのか、出ないのか?
カニやエビはたくさん入っているだろうか?
などと想像を膨らませるので、切る瞬間に気持ちがぐんと高まるである。
ここにこそクリームコロッケの魅力があるように思う。
形状や味わい、カニやえびの含有量。
風味の抽きだし方、値段もソースも千差万別、十人十色。
だが、切る瞬間のときめきだけは不変である。
それは、シェフの考えを開封するコーフンでもある。
今日もイノダコーヒ四条店で、お目見えした。
この四条店は、イノダ通にとっては特別な店で、他店にはない「オムライス」や「ハンバーグ」、「エビフライ」、そして「エビクリームコロッケ」がある。
緊張しながらナイフを立て、スパッと切り込みを入れる。
中からは、淡黄色に染まったホワイトソースが現れ、エビがコロッと顔を出す。
その瞬間、食べてもいないのに、いいようのない幸せ感が心の奥底からせり上がり、ゆっくりと体を満たしていくのだった。