伯方島「あか吉」

日本一エロ。

食べ歩き ,

エロかった。
やはり「あか吉」の鮨は、日本一エロかった。
本日最も色気を放っていたのはサワラだろう。
「ねえ、私のこと食べちゃうの」。
薄赤色が刺した白身魚は、口に入れた途端に囁いてくる。
しなやかな肉体から、品のある脂が溶け出してくる。
「私のことを一生忘れないでね」。
そう言いながら、いつまでもいつまでも余韻を残す。
一方、シマアジも危険である。
キリッとした身体の中に、とてつもない艶を隠していた。
凛とした佇まいの芸者さんから滲む色気に気づいた時のような、危なさがある。
また驚いたのがフエダイである。
普段あまり出会うこともなく、出会ったとしても、どちらかというと素っ気無い。
だがそのフエダイは違った。
姿態が柔靭である。
柔らかいようで強靭さがあるのであった。
それを噛んだ時のコーフンがあって、味わえばとめどもない艶がある。
下町の気が強い女性の意外な色気を発見してしまったような、動揺が訪れる。
さらに最後の海老は、じわりじわりと甘かった。
最初から来る甘さではなく、噛むごとに、体の芯から甘みが浮かび上がってくる。
そんな海老だった。
なにしろその甘さによって、燗酒が辛く感じるのである。
伯方島「あか吉」にて