日本で一番優しいTKG

食べ歩き ,

「日本で一番優しい卵」をいただいた。
しかも初卵だという。
初卵は、鶏が初めて産む卵で、昔から縁起物としてご老人などに差し上げて来た。
コシヒカリの真ん中に穴を開け、福井の「百笑の塩」を少しふり、卵を割り入れる。
白身に根性があり、割った殻の中に粘りついている奴がいるので、それを箸で慎重に取り出す。
しかるのち、白身とご飯だけを食べた。
白身は水分が90%以上で、理論的には味がないのに、そのふんわりとした食感のせいなのだろうか、甘みを感じる。
黄身をつぶすと、こいつも根性があって、とろりとは流れ出さない。
箸で誘導してやると、ようやく重い腰を上げて流れ出す。
これを一気にかき込んだ。
ああ。体の力が抜けていく。
濃い味の黄身というより、純真な甘みがあって、どこまでも優しく、ご飯粒を抱きしめる。
日本で一番優しい卵の意味がわかりかけた。
途中までいったら、卵とご飯をよく混ぜ、三国海岸の海女さん七世美さんが作る、海苔のふりかけを参戦させる。
ふふ。
笑いがこみ上げて止まらない。
卵と海が一つとなって、舌の上でくるりとでんぐり返しをした。