駒込  菊谷

新江戸前2

食べ歩き ,

 「挽きたて、打ち立て、茹でたて」が値打ちとされてきた蕎麦もまた、新しい仕事がある。

 「菊谷」の店主菊谷修さんは、以前よりそばの食べ比べを始められた。

産地違いの比較だけではない。

打ち立てや10割に固執せず、打ってから寝かすそばやつなぎのおいしさを出すそばの食べ比べである。

栃木で栽培した秩父の在来と、北海道の鹿追のブレンドを2割のつなぎで打ち、2日熟成したそばは、甘みも香りも肩が丸いので、そばつゆとのなじみがいい。

秩父の在来、手刈り天日干し、実の状態で4年熟成した10割そばは、穏やかな甘みがあって、心に安寧をもたらすおおらかさがある。

新潟と茨木のブレンドで1割つなぎのそばには、温かさがある。

茨木の常陸秋そばの10割は、ほのかな甘みと微かな野生のえぐみが、そばつゆの味を深くする。といった具合である。

そこには1種類のそばだけでは見えない、穀物としての生命の躍動があって、知的好奇心をくすぐりながら、食べ手の感性をも磨くのである。