後編
「オステリア・フランチェスカーナ」で食べながら、浮かんできたのは、二つの言葉だった。
「てらいがない」と、「料理の可能性」である。
前回「てらいのなさ」は書いたので、もう一つの
「料理の可能性」を
最近、食文化が爛熟して、もう料理の可能性はわずかしか残っていないのではと、食べ歩きながら、考えていた。
新しい料理は常に生まれている。
しかし伝統の感動を超えていく料理が少なくなってきたように感じることが多いのである。
しかしここで食べて思った。
そんなことはない。
そんな考えは僕自身の傲慢であると、思い知らされた。
料理は、すべて最先端であり、個性に富んでいるが、伝統文化への深い理解と敬意、そして何よりそれらを背負っていく覚悟と責任感が、皿の上で燃えている。
その炎を感じながら、料理人とは、かくも気高い人たちであったかと、撃たれたのである。
La parte croccante della lasagna
これがラザニアか? 奇をてらったラザニアかと、一口食べた瞬間、豊かな肉の香りが襲った。
味覚とは、味覚よりも視覚にとらわれる要素が多いが、この料理はとらわれてはいけない。
今まで食べたどのラグーソースより、たくましく優しく、肉の命への想いが込められている。素晴らしい!!
Piccione camouflage
カモフラージュした鳩という意味だろうか。鳩のロティと鳩の肝のコロッケが並べられている。
五色のソースは、異なる酸味、異なる甘み、旨みが深いものと別れていて、鳩の様々な表情を引き出す。
前出した
Tortellini in crema di parmigiano Reggiano
モデナの郷土料理、トルテッリーニと36ヶ月熟成パルミジャーノ レッジャーノのクリーム
シェリーのアイスクリーム、トマトパウダー
Millefogille di millefoglie
葉っぱの形のチョコレートが全て異なる味、カボチャのピュレとチョコレート
黒トリュフと白トリュフ。
Oops! Mi e caduta la crostata al limone
スペシャリテ ウップス!!落ちたレモンケーキ
レモンの酸味にサクサクとした甘いトルタ生地、ケイパーの塩気、ベルガモットの香り。甘味、酸味、塩味の際立った要素を並べながら、見事なバランスで魅了する。
プティフール順番に
フォアグラマカロン 白トリュフ添え
兎肉とイチジクのペーストに芳香なハーブとコーヒー、トピナンブールのパウダー
Vignolaというモデナに近い町のチェリーで作った チェリーソース シャーベットの入ったチョコ
Croccantinoという郷土菓子 アーモンドとピエモンテのヘーゼルナッツ、モデナのバルサミコで覆った