ミナミで仕事が終わり、思わぬ時間が空いたので二十年ぶりに出かけた。
ふと「大黒」を思い出したのである。
清潔感漂う白木のテーブル。三和土、土壁と籐編み壁の二段となった腰壁、背もたれに大黒と彫り抜いた椅子。大黒さんの置物。
変わらぬ空気が漂っている。
白菜煮、おから、酢牛蒡(各350円)いもさらだ。実直な味わい。舌にしみじみと優しい。
縞鯵を焼いてもらう。出された縞鯵600円は、身の上で小さな脂がじゅっじゅっと音を立てて踊っている。
明治三十五年来のかやくご飯と白味噌仕立ての豆腐汁。
揚げと牛蒡とこんにゃくだけの質朴なかやく飯。
質朴でシンプルを継続してきた力がある。
ここも最強の定食屋。忘れていた。
忘れていた三代定食屋。
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