「志度」のドライカレー。
ルゥ一を時間かけて練り上げ、フォンドヴォーを加え、牛すね肉や香味野菜やトマトを炒め加え、じっくりと煮込むこと六時間。チョコレート色の志度流ドライカレーが出来上がる。
ねっとり、ぽってりと重いそれは、溶けかかったビターチョコレート、ちょっとゆるい八町味噌のよう。
口に含むと、カレー香がふわりと鼻に抜けて、豊かなコクとまろやかで奥深いうまみが広がって、思わず顔が崩れる。
フライドオニオン、枝豆、干しぶどうなどが混ぜられたバターライスになすりつけるようにして、あるいは色が変わるほどによくよく混ぜて食べる。
ほのかなカラメルの苦味、隠された甘みも加わって、スプーンが止まらない。ラッキョウ、パイナップル、胡瓜ピクルスの薬味もよし。
どこにもないこの店だけのドライカレーは、うまくなれうまくなれと念じながら煮込まれた、作り手の想念もこめられている。だからうまい。
夏になるとむしょうに食べたくなる、今年で20年のつきあいとなるカレーである