「この光景を見た時、平和だなあと思ったんです。だからそのまま店名にしました」。
能登半島七尾市にある「ヴィラデラバーチェ」の平田シェフはそう訥々と話された。
大きく開いた窓からは、草原と海、空が広がっている。
青鷺や鴨、小鳥たちが時折飛来する大地と海には、なにものにも縛られない、厳然とした自然の秩序がある。
この光景を眺めながらの食事が、どれほど心を沸かせ、安らげるのか。
能登の食材を使い、能登の作家たちの器やグラスにもられる料理は、生きる喜びに満ちた平穏があった。
ローマ帝国の神学者アウグスティヌス は、秩序があるところには、必ず静けさがあり、それが平和であると説いたが、まさにここには、その真意を噛み締める時間が流れていた。