寿司屋ではワインは飲まない。基本日本酒である。
しかしこの店に来たら、ワインを頼んでしまう。
驚いたのは、まず干瓢手巻きと中落ち鉄火である。
干瓢はアマローネと合わせると、太くたくましい味となって花開く
一方べったら漬けを合わせた中落ち鉄火は、食べた途端に妖艶が漂って。夜が深くなる。
あるいはシマアジである。
白ワインと酢でマリネしたというそれは、ボーヌドシャトーと合わせると、いかった体躯をよじらせながら、色気を滲ませるではないか。
さらにアナゴや鰻は、マデラ酒と合わせると、魚の脂と煮ツメとマデラが抱き合って、濃密な闇夜に連れて行かれるのだった。
戸川さんは、古くからワインに造詣が深く、フランスのドメーヌで握ったり、ドメーヌの方も来日すると、食べに来たりする深い関係を築かれている。
店の入り口に江戸前寿司研究所との表札があるようんい、古い江戸前仕事を守っているが、その中でワインに合うように仕事を新たに考え出されているのだった。







