大阪にあって東京に

食べ歩き ,

大阪にあって東京に存在しないもの、その一つが「ミックスジュース」だ。
今日もたまらず、道頓堀の「アメリカン」で頼んだ。
薄桃色の液体が、グラスの中で楚々と佇んでいる。
愛らしい。
もちろん氷なし。
ストローで勢いよく吸い込むと、バナナが来てリンゴが顔出す。
微かな粒はイチゴか? オレンジもあるようなパインも少しあるような。
ほんのり甘く、少しだけ酸っぱく、ほのぼのとした味わいとゼータクが入り交じって、不思議な気分がやってくる。
優しいような、ツンとすましたような、ツンデレの味わいに、ささやかな非日常がある。
最後に残った数ccは、ストローでバキュームする。
「ズズッ。ズゴゴゴゴゴォーッ」と、吸う。ひたすら吸う。
グラスの脇にへばりついている奴も、ストローでかき集めて底におとし、「ズズッ。ズゴゴゴゴゴォーッ」。
大きな音を立てても、周囲の客は眉一つひそめません。
なぜならこれが、正しいお作法だから。