大きな  「はぁ~」。 

食べ歩き ,

両国橋のたもとに、しもた屋風一軒家。
約百年前に店をかまえた時には、 さぞかし風情のある景色が眺めたのだろう。
店名は「神田川支店」。
外神田にある文久二年創業の本店から、百年前に分かれた店だ。

本店と違うのは、すっぽん鍋があること。
しかも一人前3700円とお安い。

こう寒くちゃ、すっぽんで一杯やらねば明日が来ないと、コートの襟立て、暖簾をくぐる。
いやあ家族経営で、あたりが柔らかい接客がたまらないねえと
座敷でくつろぐ。

都心だというのに、音が少ない。
車の音は遠くにしか聞こえない。
旅をした気分になる、非日常。
肝焼きで一杯やっていると血のジュースに続いて鍋が運ばれる。
澄んだスープに、滲む脂 。
まずはスープを一口。
うん、いい。
出汁にに寄りかからぬ、すっぽんの味わい。
うますぎない。

後は 二人で、「はぁ~」。「はぁ~」の二重奏。
夜が静かに過ぎていく。
最後におじや。
一口、二口。
大きな、大きな
「はぁ~」。