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夏だ!飲もう!日本にいながら世界のビール(一九九九年八月号)

ビアライゼ98 新橋 泡が決め手のビール注ぎ名人

かつて八重洲に「灘コロンビア」という名店があった。

ご主人は新井徳司さんといって、ビール注ぎの名人だった。特注のビールサーバーで、独特の手法にて注がれるビールは、泡がきめ細かくクリーミーで固く、泡の中心にマッチ棒を立てても倒れない。こうして注がれたビールは、すうっと軽やかに喉に入っていき、ビールの香りや甘みだけが際立った。今まで飲んできたビールは何だったのかと、驚くほどのうまさを持っていた。

新井さん亡き後も店は営業を続けていたが、ある日突然に閉店。この店は、新井さんの薫陶を受けたご主人松尾光平さんが、「灘コロンビア」のビールサーバーを譲り受けて開いた店である。常時置いてあるのはアサヒ生(五百円)。日替わりで、麦芽率が高くコクがあり、キレのいい富士山、甘い香りと深いコクを持つスタウト、ミュンヘナー・デュンケルスタイルで、赤みがかった琥珀の時間、上面発酵ブロンズ色のイギリスビールのバス・ぺールエール、サクランボを漬け込んだベルギーの自然発酵ビール、ベルビュー・クリーク(五百五十円~)の生を揃えている。注ぎ方は必見。タンブラーグラスに泡が溢れるまで注ぎ、溢れた泡をグラスの縁に沿ってナイフでカット、再びサーバーの口を泡の中に突っ込んで注ぐと、なめらかな泡が誕生する。中でもスタウトなどエキス分の強いビールが特にうまい。

料理では、カリッと香ばしく揚げられた、コロッケやメンチカツがお勧め。何杯でも飲める、ビール本来の醍醐味をぜひ体験されたい。

港区新橋5-12-7 tel.=03-5408-8639

営業時間=16:00~22:00

定休日=日曜祭日、第2・4土曜日

ボア・セレスト 赤坂 ビール王国ベルギービールの醍醐味

バラエティに富むベルギービールと、ベルギー料理の店。ストックは、自然発酵(ランビック)、上面発酵、修道院ビール、小麦白濁ビールなど百二十種。

生は、ほのかな酸味と甘みがあるホワイトビールのヒューガルデン(八百円)。白ワインのような酸味を持つ、五、六年瓶熟成させた、カンティヨン社のグランクリュ(千四百円)や、麦芽の甘みを残したチョコレートのようなグリムベルゲン、バナナの風味のするウェストマール修道院ビールなどを、各々のビールのうまみと香りが生きる様々な形のグラスに入れて出してくれる。また、ムール貝のグース蒸し(千円)に、ワインのような酸味を持つ、新酒と古酒を合わせたブーン社のグースビール、鶉のロースト・クリークビールソース(二千四百円)に、ベルビュー・クリークなど、料理に合わせて選んでみるのも楽しいだろう。他にアンディーブのグラタン、玉葱とポテトのフライ、ポム・ダフィネット、自家製チョコレートがお勧め。胡桃割りの器のコレクションも必見。ビールに精通したご主人の話は、時が経つことを忘れさせてくれる。

港区赤坂2-13-21清川ビル地階 tel.=03-3588-6292

営業時間=18:00~22:30

年中無休

セルベッサ 六本木 料理も充実、豊富な世界のビール

雑然とした交差点の近くながら、ビール好きが静かに集う落ち着いた雰囲気。常時世界のビールが百三十種ストックされている。生は、ギネス、ハーフ&ハーフ、ヒューガルテン。瓶では、白いセラミック瓶に入れられた、滑らかな甘みがある、ベルギーのセントセバスチャン・グランクリュ、爽やかなコクを持つチェコのピルスナーウルケン、一四度の高いアルコール度数のスイスのサミクラウス、インドのマハラジャ、デンマークのジラフ、軽やかなアメリカのブルックリン・ラガー、オランダの修道院ビール、ラ・トラッペなどが面白い。料理は、大きなカツサンド、穴子白焼き、江戸前きす天ぷらなど、和洋を取り揃えている。

港区六本木3-11-10 ココ六本木地階 tel.=03-3478-0077

営業時間=18:00~24:00(日曜祭日 16:00~22:00)

年中無休

赤坂に移転

ブラックライオン 目黒 本格イギリス風パブの楽しみ 閉店

まずいステーキ&キドニーパイと、油にまみれたフィッシュ・アンドチップスがないのが寂しいだけで、完璧なイギリスのパブ。内装も、ビールの温度も、クリーミーで少なめな泡も、キャッシュアンドデリバリーも、立ち飲みの外人比率も、すべて本場の雰囲気。

樽生ビールは八種類。その内イギリスビールは、キルケニー、ギネス、オールドスペックルドヘン、バスと四種類。喉越しでスイスイ飲むのではない、いずれも味わいながらちびりちびりと飲むビールだ。珍しいイギリス版シードル、サイダーもある。料理はなく、つまみはスナック系。

目黒区目黒1-5-16 tel.=03-3491-2312

営業時間=15:00~24:00

年中無休

閉店

ビューリーズカフェ 原宿 ギネス片手にライブはいかが?

本店はアイルランド、ダブリンにある十九世紀創業の老舗カフェ。アイルランド人作家のジョイスやベケットもこのカフェによく足を運んだとか。生はアイルランドを代表するドライスタウト、甘みと深いコクを持つギネス(ハーフパイン六百円)と、赤みがかった色合いで、ほのかに苦味があるアイリッシュエールのキルケニー(ワンパイン千円)。料理は羊とジャガイモの国を代表するもので、両者を煮込んだアイリッシュシチュー(八百五十円)や、ジャガイモのグラタンなど、若干日本人向けにアレンジされているが、素朴な味わいがビールと合う。自家製のほの酸っぱいソーダブレッドもぜひ。第二火曜日と最終金曜には、アイリッシュミュージシャンによるライブがあり、その日には外人も多く、格別の雰囲気。

渋谷区神宮前6-5-6 サンポウ総合ビル2階 tel.=03-3499-3145

営業時間=18:00~23:00(金 ~24:00)

年中無休

閉店

鶺鴒 千駄ヶ谷 ビアガーデンといえばこの店

夏に開店する数あるビアガーデンの中で、もっとも快適。芝を敷き詰めた広々とした裏庭に面し、ライトアップされた庭を取り囲むようにテーブルと籐の椅子が配置されている。開店と同時に座り、都会とは思えない静けさと緑に囲まれながら、ゆっくりビールを飲む一時は実に心地よい。生、アサヒスーパードライ(七百円)、料理は、飛騨コンロで焼く牛タン(千五百円)気仙沼焼きたこ(六百円)など心にくいビールの肴がそろっている。毎晩庭では、日本舞踊も催される。

港区元赤坂2-2-23 明治記念館内 tel.=03-3403-1171

営業時間=18:00~22:30 年中無休

ベルンズバー 六本木 一歩入ればそこはドイツ

ドイツの生ビールとソーセージが味わえるバー。店に入ると、半ズボンをはいたご主人ベルンド・ハーグさんが、「ハーイ、元気ですか」と、にこやかに声をかけてくれる。店は、夜が更けるほど込み合うが、そのほとんどがドイツ人。皆座る事なく、ゆっくりとビールを立ち飲みし、大声で談笑している。窓の外に目を向けなければ、雰囲気は完全にドイツである。

生は、ソフトで軽いコクがあるピルスナータイプのビットブルーガートとイェーバー、濃い赤銅色をした果実香と軽い苦み、程よいコクを持つ、ダイベルズ社のアルトビール、コクが深い濃色ビールのコストリー・ドゥンケルの四種類(八百円~)。瓶から注がれるビールでは、白ビールのエルティンガー・ヘイル(千円)、甘く爽やかな香りあるシュナイダー(千三百円)がお勧め。

料理では、甘酸っぱいマスタードをつけて食べる、仔牛肉で作った白ソーセージのヴァイスヴルスト(千三百円)か、ウィンナー、ニュールンベルガー、クラカウワ、フライシュケーゼを盛り合わせた、ソーセージプレート(二千五百円)をぜひ。付け合わせはもちろんカリカリに揚げたポテトとザワークラウト。ハート型のドイツパンもサーブされる。

港区六本木5-18-1 ピュア六本木2階 tel.=03-5563-9232

営業時間=17:00~翌2:00 定休日=日曜祭日

閉店