「象に踏まれたハンバーガー」。

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参宮橋のバー「シャンクス」の新作は、「象に踏まれたハンバーガー」。
店主の芳賀さんは、これを作るためにタイに渡り、小象の置物を購入した。
というのはウソだが、ハンバーガーが見事につぶれている。
完膚なきまで、徹頭徹尾つぶれている。
ハンバーガーをつぶさずに、いかにうまく食べるかを追求してきた私の人生を返してほしい。
しかも切られているではないか。
クミンなど香辛料を入れて作った、通常の150%増しのパテをバンズに挟んだら、鉄のプレス機でつぶして焼くのである。
その間パテから出た肉汁が、バンズに染み込んでいく。
パテとバンズは密着し、まぐわい、凝縮感を増していく。
「カリッ」。バンズに歯を立てると痛快な音が響いた。
普通は音が立たない。ふんわりと歯が包まれるだけである。
初めての経験に目を丸くしていると、クミンの香りと共に肉の香りが流れて、爆発した。
なんたる肉感豊かなハンバーガーだろう。
オラオラオラと肉の叫びが、滋味が染みたバンズからもパテからもやってくる。
コーフンしちゃうよこれ。
なぜ今までつぶさなかったと思う、コペルニクス的発想である。
通常中に挟んであるレタスやトマトは、添えられているので、挟んでもよし、このようにくるんでもよし。
くるんで食べるのと、そのまま食べるのでは、また味が違うんだなあ。
ヴァンナチュールの赤や、ビールと一緒にやると、また味が変わるんだなあ。
ああ、これはコワイ。
食事の後についよってしまいそうで、とてもコワイ。