初ピラルクーである。

食べ歩き ,

初ピラルクーである。
学名Arapaimagigas、アロワナ目アロワナ科ヘテロティス亜科に属し、現存するアラパイマ属唯一の種であり、。体長3m以上になる、世界最大の淡水魚の一つである。
「身は世界一美味く、肝は宇宙一美味い」と、結局は釣ることが叶わなかった開高健が、ヤケ気味で叫んだ魚である。
それがグリルにされ、皿の中央に鎮座されている。
脇に従えるは、バナナを炒めてファローファ(キャッサバの粉)をまぶしたものと、黄色い唐辛子のアヒ・チャラピートとココを混ぜたソースである。
恐らくこいつは体長30㌢くらいの、小ピラルクーだろう。
小さいとはゆえ、「どうだい人間、俺を食べるか」と聞いてくる迫力があって、さあどこから箸を(この場合フォークだが)つけるかなと、考えさせられる。
腹身の脂ののっていそうなところをむしってやった。
その身は柔らかい。
はらりとほぐれて舌の上に乗る。
身は海の白身魚のそれではなく、にじますや鮎に似た拙い繊維質である。
そして噛み締めれば、ほのかな甘みをがやってくる。
やはり塩水という海水に揉まれた魚と違い、身は川魚のそれである。
あの巨大魚の肉が、意外にもしなやかで甘みを秘めているところに、開高健は撃たれたのだろうか。
そんな想像をしながらさらに噛み締めていくと、奥底からそっとエグミが現れ、「舐めちゃいけませんぜ旦那」と言いながら、胃袋に落ちていくのだった。