僕は途方に暮れる。
永田町駅の、半蔵門線と有楽町線の乗換え通路に
ニンニクの芽が落ちていた。
ぽつねんと、落ちていた。
にんにくの芽です。
八百屋じゃない。スーパーでもない。
地下鉄の構内。
でも、にんにくの芽。
にんにくの芽で料理作ろうと思ったのね。
豚肉も買って、 オイスターソースも買って、
家に帰ったら、なぜかいなかったのね。
あるいは彼氏の好きな、豚肉とにんにくの芽炒めを作ろうと思ったのに
ケンカしてブチ切れたのかもね。
勢いで買ってみたが、料理法をしらないことに気づき
不法投棄したのかものね。
一人さみしく横たわる。
誰も、気にも留めず
触られず。
足げにもされず 。
「ぼくは非常口ではないよ」。
と叫んでも、相手にされず。
どうして僕は生まれてきたのだろう 。
自問自答するも答えが見つからない
だからにんにくの芽は、
なすすべなく、
途方にくれる。