僕の子供が

日記 ,

「僕の子供が大きくなって、挑戦ってなに?って問われたとき、自分が挑戦していなければ、何も答えられないじゃないですか」
そう言って彼は、社内プレゼンで泣きながら訴えたという。
願いは認められ、彼は借金をして、新宿の片隅で小さなバーを始めた。
バーの経験もなかったが、みんなが心からくつろげる場所を提供したいと、店名を「Toilet」と名づけた。
わざと看板も出さず、宣伝もせず、ゆっくりと行こうと決めた。
まだまだ満席になることはない。
特殊な酒や、飛び切りの料理があるわけでもない。
ただ店には、彼とお手伝いの女性から滲み出す優しい心根が、静かに漂っているだけである。
それ以上、なにがいるというのだろう。
店の片隅にはなぜか風呂があって、望めば足湯をしながら、酒を飲むこともできる。
そんなことが似合うバーも珍しい。
良く考えればトイレとは、くつろぎながらも、人には見せずに毎日踏ん張る場所でもある。
それはとても「努力」に似ている。