人は「ねちねち」に弱い

食べ歩き ,

人は「ねちねち」に弱い。
調査によれば、最も弱いのは「もちもち」らしく、それに「しこしこ」や「しゃきしゃき」が追随する。
どちらかというと、「ねちねち」は忘れがちであるが、たまに出会うとやられてしまう。
博多の皿うどんは、その「ねちねち」で誘惑する。
元祖の「福新楼」によれば、冷蔵庫がない時代に、麺を油で揚げて保存していた。
しかし揚げた麺はゴワゴワで、食べづらい。
そこでスープで煮込み、柔らかくすることことを思いついたのだという。
炒めた野菜にスープを注いで、軽く煮込む。
野菜を鍋から取り出し麺を入れ、醤油と少量の砂糖を入れて10分煮込む。
しかるのち野菜を戻し完成する。
食べれば麺は、ねちっねちっと歯の間で弾み、吸い込んだ油のコクとスープのうま味と甘みを舌に広げる。
これはクセになる。
具は、キャベツに人参、もやしに木耳、西門蒲鉾店の紅白蒲鉾と角天、豚肉で、麺と一緒に食べても、麺の味をリフレッシュさせるために交互に食べてもよし。
僕は後者が好きで、最後はわざと麺だけが残るようにする。
そして麺だけの味を、しみじみと味わいながら箸を置くのである。