10FEETと南沙織にトニー谷<京都の平生>4

食べ歩き ,

京都大作戦。
フェスシーズン突入。
これから毎週末フェスである。
去年台風で中止になっただけに、
出演者たち誰もが、フェスと10FEETに対するリスペクトがにじみ、溢れている。
これがフェスだ。
で、夜。
「お待ちしておりますさかいに」。
電話で場所を尋ねたら、年配の女性が出て、いまどき使わぬ京ことば。
どこの国かと思う。
ここは千本通り中立売あたり。
昔は色街。
「五番町夕霧楼」の舞台となった近辺である。
「サントリーバー ヘルメス」

入れば女将さんがいて、「こんばんわ」とまあるいイントネーション。
並ぶのはだるまやリザーブなれど、これらが高級品だった時代をうかがわせる飾り方である。
ハイボール頼むと、
「なんぞ、音楽かけますか」と聞いてきた。
見れば、ずらりと並ぶシングル盤。
「北原ミレイお願いします」。
すっとしゃがむと一枚かけた。
どこになにがあるのか、すべて記憶しているのだ。
「懺悔の値打ちもない」。 懺悔の値打ちもないけれどぉ~、と心の中で口ずさみながら、ハイボールをなめる。
続いて、もう一枚かけた。
「石狩挽歌」。
くう~。ハイボールがうまくなったぞ。

「ぴーひょろり~」と、繰り返していると、奥から大女将が現れた。
「どこぞからいらはりなさったの?」
先ほどの電話の方だ。
話好きでいろいろ聞いてくる。
「音楽好きやろ。お顔見たらわかるわ。たんと聞いてな。なんでもありますさかいに」。

「ジャズもミュージカルもありますよ。最近のはCDもありますよ」
と女将さん。
「トニー谷お願いします」。
急になぜか思い立った。
「さいざんすマンボ」。
「レーディースアンドジェントルメン アーンド おとっちゃん、おっかさん」
ううむ。
宮城まりこの歌う「わたしあなたにアイ・ブラ・ユウー」の後ろで、そろばんシェイク冴えまくり。
「ちきしょう。ハイボールおかわり」。

「次はなにいきましょか」。
女将さんのって来た。どうせ客は僕一人。
「モダンジャズどうですか。いきますか。テイクファイブでいいですか」。
「コルトレーン」と、ためしに言ってみようとした矢先に先制を打たれた。

ズチャッチャチャ、ズッチャ、ズチャッチャチャ、ズッチャ。
おなじみのリズムに乗って主旋律。
懐かしいぞ。
「ハイボールおかわり」。

「アイドルって言ったら好きなのはだれですか」?
「木ノ内みどり」。
とっさに答えたら、女将さんぽかりとしてる。
しまった。では
「南沙織」。

無言でしゃがんで一枚かける。

「哀愁のページ」。
やられた。

先週お会いした、酒井正利さんを思い出して、もう一杯。
西陣の夜はふけゆく 23時。