世に絶対的なものが唯一あるとしたら

食べ歩き ,

世に絶対的なものはない。
しかし唯一あるとしたら、「コートドール」の「国産牛テールの煮込み 赤ワインソース」ではないだろうか。
現れた瞬間からして、神々しい。
黒いダイヤモンドである。
肉を切ろうとすると、抵抗なくホロリと崩れ、ソースに落ちる。
口に入れればぶるると震えて、舌に乗る。
五感は、混沌となった、うまみの沼に沈んでいく。
そこへ太い酸味が灯を照らす。
濃厚でいながら軽やかさがあり、圧倒感がありながらエレガントである。
つまりこの料理には、世の神秘が託されている。
だから絶対なのだ。