三島由紀夫や木下順二を始めとして各界の名士に愛されてきた湯島「琥珀」が、50周年記念ということで古いボトルを一気に持ち出した。
中でも目玉が、40年前のブラックホワイト、それもなんというのですか、約2.5リットルボトルの御開帳とあいなった(ほかにもいろいろあるでよ)。
なんとアイレイのようなピート香が漂って、樽の香り、コク、甘み、と複雑な味わいが絡み合い、実にうまい。
ウィスキーの中に、ブレンダーの矜持が凛と貫かれていて、有無を言わせぬ味の豊潤がある。
何も足さない、何も引かないなんてチャンチャラおかしいわいと思うブレンデッドウィスキーの凄みが、口腔に広がって、恍惚を呼ぶ。
今の素っ気無いブラックアンドホワイトからはまったく想像できない味だ。
同じく40年前のワイルドターキーもまったく違う酒で、熟れた樽香が溶け込んで心を誘惑し、脳髄を溶かす、淫靡なな味わいである。
昔の酒は、工業製品ではなかった頃の酒は、人生の憂さを忘却させる媚薬であったのだ。
あなたが酒飲みなら、琥珀は待っている。