官能

日記 ,

三人が、同時に食べた。
無言。しばし無言。
「笑うしかないね」。同席の彼はそういった。
一週間半前の「コートドール」。「銚子産ノドグロの天火焼き」。
ぬめっとしたエロティックな食感に目が潤み、
ゆっくりと噛めば、いつまでも味が湧き出てくる。
塩焼きにはない保湿が完璧で、ノドグロはまだ海の中を泳いでいる。

そのしなやかな肉と下仁田ネギのオネバのとろみが抱き合う一瞬。
さらにソースの塩分と煮詰めたシェリーヴィネガーの酸味が、
魚の脂肪分と葱の甘みの出会う時、官能に響く味が生まれるのだ。
そして我々は言葉を失う。

白もいいが、赤に合わせると
途端にノドグロは凛々しく、かつエレガントの表情を見せ
我々はまたしても言葉を失った。