一行は「断る」という言葉を知らない。、
「もう一軒行く?」 「行く!」
シンディ家でたらふく食べたのに関わらず、無意識のうちにもう一軒への誘いに同意するのであった。
行く先は「粥家」である。
まあ粥なら満腹でも食べられるかという読みもあったかもしれない。
だが。
カウンターにはずらりと惣菜が並んでいるではないか。
指差せばおばさん達が、黙って皿に載せて渡してくれるではないか。
結果こうなった。
さらに困ったことに一口食べると、まあ当然というか御飯が進む味わいなのである。
粥、というより白飯なのである。
だがこらえた。優しい粥の味で白飯を頼むのは、こらえた。
惣菜での中ベスト③は。
1白菜の煮物。白菜のスルメ乾物の煮物で白菜がとろとろで甘く、底にスルメの甘みが加わっている。
2シジミの紹興酒漬け。殻の縁まで溢れんばかりに太ったシジミである。それが紹興酒のうま味をすいながら酔っている。これは酒だ。と叫んだが、当店には酒は置いてません。持ち込んでもいけませんと、断固とした態度をとる店のので、オジサンはあきらめるしかなかった。
3皮蛋の炒め物。あの皮蛋が炒められている。ニンニクの葉と唐辛子、少しの醤油と砂糖で炒められている。あのドロンとした甘い黄身は、さらにドロドロになって舌にまつわりくのだ。直ちに「御飯!」と叫び出したくなる。
いやあ濃淡のめりはりがあって、惣菜を沢山頼むのは、幸せである。
こりゃあついつい頼んじゃうね、と言いあいながら周囲を見れば、皆さん一人で二皿ほど頼んで、つつましく食べてらっしゃる。
すいません、余ったおかずは舞ちゃんがテイクアウトするたい。許してね。