一個3000円というブンタンを食べた。
甘いが苦く、どこか地味さを感じる、というのがブンタンのイメージだった。
ところがどうだろう。皮をむかれたブンタンが、白皿の上でキラリと輝いている。
一房食べた。ブンタンは、ぬるんと唇を抜けると、しなやかに身を崩す。
筋など一切ないかのように滑らかで、豊かな汁が溢れ出す。
甘く酸っぱいが、単に甘酸っぱいのではなく、心が晴れやかになる気品がある。
いや貴賓といったほうがいいような、神々しい甘みがあって、苦みも雑味も一切ない。
果肉は滑らかながらしっかりとして、「さあ、お噛み」と誘ってくる。
なにか壇蜜と対峙している気分になった。
手を付けるのが恐れ多いようでいて、もっと食べたい。
そんな人間の気持ちを手玉に取るように、ブンタンは陽光を映して、さらに輝きを増すのである。
千疋屋銀座店にしかないブンタン。
高知で入念に育てられたブンタンは、去年11月に採られて寝かしておいたものだという。
そうすることがおいしくなることを知っていながら、農家は早く出してしまう。
だから苦味が取れない。
果物にも熟成が必要なものがあるものだと知った。
水晶ブンタン。