マイ味噌ラーメン史

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生まれて初めて、味噌ラーメンを食べた。

いまから三十六年前、一九六八年のことである。

すでに人気が出始めていた、「サッポロ一番みそラーメン」である。

味噌とラーメン? 疑心暗鬼になりながらラーメンをすすった瞬間に、口をあんぐりと開けた。

おいしくて笑い出した。

味噌のコクと香りがラーメンとなんともよく合う。

こいつはすごいぞと夢中になって、最後の一滴まで飲み干した。

カルチャーショックを受けた僕は、当時唯一の店だった両国のどさん子で、さらなる衝撃を受けた。

いま思うと、塩分が強く、油分も多く、味噌の味が前面に出た味だったが、当時中学二年の、食べ盛り少年を虜にするには充分であった。

その後東京では味噌ラーメンブームが起こり、早稲田のえぞ菊や銀座の時計台、赤坂の薄野といった店が増えていく。

しかしいま東京では、味噌は主流派ではない。塩分油分旨味過多からの脱皮傾向や、湿気が多く暑い土地柄に向かないのか、味噌ラーメンを看板にあげる店は多くない。

しかし一方で、東京ならではの深化を遂げているのである。

その最先端が「五行」であろう。

スープはコクが強く、油分も濃いが、味と香りのバランスが見事にとれているため、いやらしくない。

焦がした味噌の香ばしさと濃厚なスープの旨味を、滑らかでサクサクとしたコシを持つ中細麺が受け止め、すんなりと胃袋に収めさせるのだ。

時折口を賑わす挽き肉や玉葱、とろりと崩れるチャーシューもよし。

そして食べ終えた後に残る香りの記憶が、しばらく経つとまた再び食べたくさせる。

そんな後味を引き込むラーメンでもある。

一方「一福」のラーメンの魅力は、優しさである。微笑んでしまうような甘い香りが、ふわりと立つスープ。

たまらず一口すすれば、味噌味も旨味も突出しない丸い味わいが、舌を包み込む。

その味わいは食べ進むにしたがって深く、濃密になっていく。濃密で温かみを感じさせる味噌のポタージュだ。

一週間熟成させたという中太縮れ麺のコシは、そんなスープを力強く受け止め、一気呵成に食べさせてしまう。

旨味はしっかりしていながら、味わいが優しいので、食べ終わると気持ちが安らかになる。そんな味噌ラーメンだ。
「味香美」の味噌ラーメンは、深化というより郷愁を呼ぶ。

旨味が過剰でなく、味噌の風味が穏やかに出たラーメンだ。

モチモチとした自家製多加水麺もそんなスープと相性よく、シャキッと火を通したもやしや玉葱、チャーシュー、木茸、帆立のヒモ、豚バラ肉、挽き肉といった具も申し分なし。

昔の誠実さが宿った、懐かしくなるラーメンだ。

五行5775−5566 閉店
一福 5388−9333

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