ベストはスマガツオだった。
繊維などなきかのような身は、どこまでも滑らかで、すうっと歯が包まれる。
あまりにも滑らかで舌と同化するような感覚は、上質の本鮪の中トロを食べた時、いやそれ以上かもしれない。
口をゆっくり動かすと、品のいい脂が流れ、甘い香りが口の中に広がっていく。
僕は、宙を見つめながら何も言えず、しばし動けなかった。
次のベストは、1.5kgのシマアジである。
噛めば、シコッとして凛々しい。
人間におもねることのない、魚としての尊厳がある。
脂はのっているが、整然とした品格があって、あっという間に口の中から消えていく。
口の中に甘い夢を残して。
めくるめく魚の世界 鹿児島「鮨匠 のむら」の全魚料理と握りは別コラムを参照してください