プリッ

食べ歩き ,

プリッ。
まだ雪の残る土から掘り出された新春の筍は、か弱き歯触りを見せる。
最盛期のりりしい食感にはいたらぬつたなさが、胸をくすぐる。
木の芽和えも若竹煮も、その淡い力に合わせた慎ましやかな味付けで、春への期待をあおる。
プリッ。
食べてはいけないような切なさは、芽生えの刹那だ。
プリッ。
鼻に抜けるはかない香りは、命の尊さだ。
半月前、走りの筍を口にしながら感謝をにじませた。
やっと暖かくなった。そろそろ「祇園浜作」では、根元を大きく切ったじきがつおが出されているのだろうか?
ああ、ザクザクっと筍を頬張りたいなあ。