ブリアンツァにて

食べ歩き ,

「あ」。
一口食べた途端、そういって体の力が抜ける。
しかし弛緩しながらも、体の芯が火をつけられたように燃える。
こんなハンバーガーは食べたことがない。

手切りした鹿児島黒毛和牛14歳の熟成800gとブラウンスイスのもも肉500gを合わせたという。
鹿児島の色気のある香りがまず口を満たし、そこをブラウンスイスの優しさが包み込む。
40過ぎの色香をふりまく妖艶な女性が母性をむきだして抱きしめられたような、女としてのアンビバレントな魅力に堕ちる自分がいる。
自家製パンの香りと淡い甘みは、その色気を受け止め、食欲を鷲掴みにする。
単純明快、一口目からうまいと言わせる宿命を背負ったハンバーガーに、こんなにも紆余曲折、複雑なうまみを纏わせることができるのか。
新保さん、吉田さんにも食べてもらいたいなあ。
ブリアンツァにて。

「厨房のすべての仕事を止めてしまいました。もう二度とできないかもしれません」とは奥野シェフ。
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