ベトナムの麺料理フォーの魅力は、スープと香りにある。
牛骨や鶏ガラ、野菜類を丹念に煮込んだ、深みとクリアーな旨味を合わせ持つスープと、ハーブ類が織りなす爽やかな香りは、実に優しく、洗練された味わいである。
このスープに麺の魅力を加えたのが、「チョップスティックス」である。
店は、駅前の大市市場というわずか三十メートル足らずの簡易市場の中にあって、屋台のような小さな店である。
だが店先には、「日本初のフォー生麺の店」という文字が誇らしげに躍っている。
日本のベトナム料理屋の麺は、大抵乾麺であり、現地では蒸しあげた麺を使っている。
まずは基本からということで、「蒸し鶏のフォー」を頼む。
やがて運ばれたフォーからは、シナモンだろうか八角だろうか、甘い香りが立ちのぼって食欲をそそる。
鶏のスープはふくよかな滋味を漂わせ、飲むごとに旨味を増していく。
生麺はやわな乾麺と違って、ほの甘い米の香り漂い、口当たりが滑らかでモチモチとしたコシを弾ませる。
この香りと確かな食感があってこそ、滋味豊かなスープ受け止めるのである。
後日いただいた「温野菜と豆乳スープのフォー」は、さらに麺とスープの相性よく、思わず笑いがこぼれるほどであった。
ぜひ今度は、追加料金を取ってもいいので、バジルや香菜をたっぷり使ったフォーで、スープ、麺、ハーブががっぷり四つに組んだ真骨頂をいただきい。
高円寺「チョップスティックス」