ハンバーグに乗った目玉焼き

食べ歩き ,

「ああ」。
人が思わず嗚咽を漏らすのは、
ハンバーグに乗った目玉焼きの黄身が潰れて流れ出た時である。
その理由は、デミグラスソースやハンバーグへの敬意をもあるだろう。
黄身がデミグラスソースと混じり合った味を想像してしまうのもあるだろう。
だが最も大きな理由は、「流れ出す」という光景ではないだろうか。
そこに大きなカタルシスを感じるからではないだろうか。
普通の目玉焼きより感じてしまうのは、ハンバーグやデミグラスのこげ茶色と対比に感じてしまうのもあれば、ハンバーグの上という高さからの落差で流れ出すということもあろう。
だがそれよりも、ハンバーグというご馳走を汚してしまったという意識が、大きいように思う。
黄身がゆっくり流れ落ちる時、あたかも心の中に溜まっていた感情の澱が解放され、気持ちが浄化されていくような同期が、潜在的に起こる。
だから人は、「ああ」と嗚咽漏らすのではないかと思うのである。