代々木上原の町蕎麦屋「朝日屋」

ハメをはずす

食べ歩き ,

時に人間は、ハメをはずすことが大切である。
僕の場合は、ハメをはずすといっても小さなことで、人に迷惑をかけるのではない。
昨日も、一人静かにハメをはずした。
代々木上原で町蕎麦屋に入って、中華そばとミニカレーライスセット1050円を頼んだのである。
なんだ、そんなことかと言うなかれ。
この日本特有ダブル炭水化物は、滅多に頼まない。
数年ぶりかもしれない。
だが店内はすでに、ダブル炭水化物派が多くいた。
カレー丼ぶりにミニかけうどん。カツ丼にもりそば。
肉みそうどんにミニカツ丼。天南蛮そばにミニ親子丼。
中には、生姜焼き定食にミニかけ蕎麦という豪の者もいる。
それを見ているうちに、ダブル炭水化物を頼まなければ、男がすたる。そう思ったのである。
やがて、僕の中華そばとミニカレーライスが運ばれた。
ここの中華そばは、自家製麺である。
ミニカレーライスは、ミニとは言えないほど量がある。
まずはスープの味を確かめ、ワカメで繊維質を取り、しなちくを一本食べてから麺をすする。
うん、この鄙びた味たまらんなあ。
そしてカレーライス。
うん、このインドと隔絶し、日本に思い切り寄ったカレーライスもいい。
そして再び中華そば。
こうして中華そばからカレー、カレーから中華そばを渡り歩き食べをくりかえすのである。
カレーを食べた後の中華そばが、少し甘く感じるのは気のせいかしら。
途中でカレーに、少しだけ中華そばスープを入れ、しなちくも参加させてみた。
緩くなったルーに、歯ごたえしっかりのしなちくが加わって、こりゃ面白い。
ついでにナルトも半分ちぎって入れてみた。
これまたカレーの中での食感に、風情が出る。
こうしてしずしずと、年齢的にも体重的にも摂取してはいけない、ダブル炭水化物を食べ、血糖値を上げてハメをはずす。
ささいながらも、いけないことをしているという調味料が加わって、幸せふくらむ。
若い人にはわからんだろうなあ。