ドライカレーは矛盾に満ちている。
「カレー」という言葉は、タミール語でスパイスの入ったソースを意味する「カリ」に由来し、水気のある煮込み料理の形態を表す。
つまりドライカレーとは、水気がありながら乾いているという意味になってしまうではないか。
これではまるで、水気なし味噌汁、乾燥シチュー、干しスープ、黒い白馬と名乗っているようなもんである。
もっともドライカレーという言葉は日本だけのようで、日本式インド料理として、我々は楽しんでいる。
またドライカレーは、逃げ道がない。
出された瞬間から最後の一口までドライカレーであり、同じ味がずっと続く。
だから今日は、味変してやろうと思った。
追加でポテトサラダとコロッケを頼む。
マスターが見事な手つきで中華鍋を振った、出来立てのドライカレーが湯気を立てて運ばれる。
まずは一口。
うむ、香ばしさ、うま味、適度な油感、上に散らしたローストオニオン、混ぜたレーズン、米のパラリ具合すべてが決まった、王道ドライカレーである。
途中で、コロッケにソースをかけ参戦させた。
ドライカレーをすくったスプーンの上にコロッケを乗せて食べる。
ソースの旨味とコロッケの衣の食感が加わって、これはうまいではないか。
ドライカレーにコロッケ、ありである。
新たな発見に気を良くして、ポテトサラダとドライカレーを合わせてみた。
すいません、同じ芋系ながらマヨネーズの味が邪魔して、これは合いません。
次に添えられた鶏肉の塊はフォークで細かくしてドライカレーに混ぜ込んだ。
ああこれはチキンライスドライカレー風といった雰囲気でなかなかよろしい。さらにキャベルのサベジと福神漬けを混ぜ込んでみる。
これも福神漬けの酸味と食感が、アクセントを生んでいい。
こうして食べていけば、相当なご飯量なのに、瞬く間になくなってしまう。
ある意味危険です。
本石亭にて