時折ドライカレーが無性に食べたくなるときがある。
ソースという液体に頼らない軽い食感と、ご飯や挽き肉に封じ込めたカレーの香りを思い出すと、居ても立ってもいられなくなる。
ドライカレーは大別すると、ミートソース系とピラフ系の二系統があるが、後者最近で希少になりつつある。
古いタイプの喫茶店などではまだ存続しているようだが、洋食屋ではとんと姿を見なくなった。
そんな折、すぐれたピラフ系のドライカレーがいただけるのが、青山からす亭である。
この店は、初代が一昨年閉店した赤坂のからす亭で修行をし、のれん分けで青山に出した店が母体である。
赤坂からす亭も「カラスライス」と名づけたドライカレーが名物で、常連である花柳会のお姐さんたち好みの、具を豪華に使ったものだった。
青山からす亭のそれも、鳥もも肉やベーコン、マッシュールームを盛り込んだ、炒め飯スタイルである。
カウンターで作る様を見ていると、フライパンを縦だけではなく横方向にも動かして、米が何度も空中を舞っている。
その技が見せる通り、空気を含んでパラリと炒められ、ご飯一粒一粒にカレーの香りと油のコクが絡んでいる。
さらにはマッシュルームやタマネギのうまみ、ブイヨンの滋味などがご飯にしっかりと染み込んでいて、しみじみとしたうまさもある。
一さじ一さじと、食べるたびにおいしさがつのる、古きよき洋食屋の仕事が生きたドライカレーである。
写真はイメージ