タリアテッレ

食べ歩き ,

タリアテッレ うなぎとレモンのクロカンテ 
卵黄と粉で練った麺を乾燥させて熟成させたタリアテッレは、かすかな歯ごたえを残して、我々の歯を喜ばす。
これ以上でも以下でもない、精妙な薄さに仕立てられ、パリッと香ばしく焼かれた浜名湖産の天然うなぎの脂の甘みと、甘く煮たレモンの甘酸っぱさを受け止める。
三ツ星「ダル・ペスカトーレ」のブルーナおばあちゃんからナディアに受け継がれた料理を、村山シェフが再現した。
「空気も温度も、食材もフライパンも違う。その中でいかに「ダル・ペスカトーレ」の味を再現できるか、二ヶ月間悩み抜きました」。
その味は、どこまでも静かで、喉に落ちてからようやく滋味が、脳に染み渡っていく。
心の中で、「うまい」と呟く。
目をつぶれば、マントヴァの清涼な風が吹き抜ける。
それは、自然と寄り添った人々が作り出した、質素でこの上なく贅沢な智慧の味だった。
目黒「ラッセ」にて。