スープなのに噛んでいた。

食べ歩き ,

スープなのに、噛んでいた。
肉を頬張り、食らっていた。
うさぎ二羽半と野菜を、弱火で4時間煮たスープである。
塩と水だけで、イタリア産のうさぎのエキスを抽出していく。
急がず慌てず、じとじとと。
ゆっくりと溶け出した味には、無理がない。
肉や骨に眠っていた養分が、いつのまにか水に溶け込んでいく。
きっとうさぎは、知らず知らずのうちに、自らの養分を投げ出したのだろう。
高山シェフは、4時間経ち、すべてを引き出せた、その頂点を見極めて火を止め、すぐさま器に盛る。
一口目は、優しく思いやりを込めた火加減ゆえの、安寧な味わいである。
しかしその安寧な奥底から、うさぎの滋味が顔を出す。
まるでうさぎを手で持ち、かじりついたような味わいが、口の中を満たす。
野を駆け巡るうさぎが、舌の上で身悶える。
どこまでも優しく、どこまでも凛々しい。
そしてどこまでも、慈しみ深い。
野生とは、自然とは、そういうものだ。
メゼババにて。