スプリットが怖くて投げられなかった。

食べ歩き ,

2023年の言葉 vol2
西麻布に店を出した頃は必死で、お客様も来ていただいたんですが、一年は思うようにいかなかったんです。 
新しいものを生み出そうとするのは、簡単ではないし、お客さんもついてこない。
想いが強すぎたのかもしれません。
だから当時の料理を見れば笑っちゃいます。
穴がないようにとか考え、全部直球勝負していました。
スプリットが怖くて投げられなかったのですが、今は、力抜けました。
スーツァンで、和牛の真空仕立てとピーマンを別に火入れして作る青椒肉絲が大人気で、お客さんからもう一回作ってと言われたんですが、あれは過去の料理で、今は目指している方向性が違うといって作らなかったことがあるんです。
しかしどうしてもと言われて作ったら、めちゃくちゃ喜んでもらえて、こんなに人が喜ぶ料理を作れるのに、作らない選択肢って何? そう思ったんです。
お客さんが求めているのを作るのが、自分たちの仕事です。
そこで大きく反省しました。
自分ではそうなりたくないと思っていたのに、どこか料理人としてのエゴに突入していたんだなあと。
菰田欣也さん