ゲタリアの「El Kano」

日記 ,

ゲタリアの「El Kano」のうまいもん。
まずは、COCOTHA DIF TEXTURA(ココチャを異なる調理法で)だろう。
メルルーサの顎肉である。
日本人なら誰しも、魚の唇周りのおいしさは知っているが、顎肉だけを集めて料理するとは、バスク人も相当な食いしん坊である。
ご覧の通り、一皿にCOCOTHAが三つ、つまり3匹分を食べるというゼータクなのであった。
左から、フライ、炭火焼、ピルピルソースとなっている。
このCOCOTHA、食感がいけません。
それはディープキスなのである。
クリッとした貝のような弾力があるかと思えば、舌や口腔内の上顎に、ヌメッと舐め回す食感もある。
噛んだ瞬間、あわわと慌ているうちに、なにしろ小さいのでなくなってしまう。
僕は、揚げて香りが閉じ込められ、口の中で開くフライが好きだな。
いずれにせよ、味というのは性的興奮と密接に結びついていることを知る料理である。
次は、魚のスープである。
驚くほど黒い。海苔を入れちゃったんじゃないのと思うほど、黒い。
でもこれは白身魚だけでとったスープなのだという。
黒いのは、ソパコ(そば粉じゃないよ)というパンを入れているからである。
高い温度で焼いて、表面を焦がしたパンを入れるため、真っ黒となる。
ちなみにカスティーヤ地方だと白いパンを入れるという。
飲めば、見た目と違って味が濃厚ではなく、優しい白身魚の味がにじみ出る。
微かな酸味はトマトか。
白身魚だけで得られぬ旨味があって、おそらくだが、この地方では干したタコをつくる習慣があって、それが出汁として入れられているのではないかという。
干しダコのスープだなんて、中国料理だけかと思っていたが、遠くバスクにもあるんだね。


さあスープは飲んだ、次に欠かせぬものは、CHANGURRO HORNO(クモ蟹のオーブン焼き)である。
見た目は、蟹の甲羅焼きに似ているが、味の根性が違う。
茹でた蟹の身と蟹からとった出汁を合わせてオーブンで焼いているのだろう。
味はまさしくビスクで、ビスクの蟹の身あえと考えれば、顔がだらしなく崩れていくのをやめることができないのだな。


さて欠かせぬもの、最後は、RODABALLO PARRILLIA(カレイ)の薪火焼きである。
巨大なチュルボを店の外にある、薪火焼き場で、この店が考案したという魚焼き用の特製網を使って焼く。
焼きあがったら真ん中を開いて中骨を抜き、酢とオリーブ油によるソースをかけて閉じる。
サーブは店主である二代目が、口上を述べながらやってくれる。
同席したスペイン人が、「もう何度も聞いてウザいので、英語でやってもらって」というのがおかしかった。
「皮の黒いサイドはこうで、白いサイドはこうで、縁が話部分はこういう味がして」と述べながら両方と縁側部分を取り分けてくれる。
なにしろ1.2キロくらいの華麗であるから、皮と皮下のコラーゲンがたくましい。
食べていくと、唇周りがペッタペタになってくる。
白い、つまり砂地にいつもついている方がコラーゲン感が若干強く、上側の黒い皮の方が香りがあるように感じた。
でも何より美味しかったのはこれだけ大きいカレイだもの、ほっぺの肉もたっぷりとした厚みがあって、ほの甘い。
ここがたまらない。
その他、イカはヤリイカのようだが、アオリイカのような食感と厚みがあって甘く、カジキマグロのような味わいのカツオ(向かって左側)とマグロも、味がしっかりあって、美味しい。
食べ終わったのが、2430分。
でもまだこれからメインを食べようっていう客もいるのだから、バスクの人たちの食欲は凄まじいのだな。